台湾編 線から点へ

一人旅は孤独であるか? 昆虫放浪記 台湾編 〜線から点へ〜 その2

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羽田空港寝床探訪記

飛行機の時間は午前5時である。
2時間前には空港でチェックインをしなければならない。
ということは3時には空港にいる必要がある。
もちろん午前3時に電車はない。

徹夜である。

前日はゆっくり過ごしたつもりであるが、準備やらなんやらに追われて少し疲れたまま羽田空港へ行くことになってしまった。
このままでは疲労を抱えたまま台湾へ行くことになる。
疲れのせいで虫が撮れぬのは非常に困る。

時刻は午後11時過ぎ。
空港で寝床を探すことにした。

チェックインカウンター階のちょっとフカフカの椅子はだいたい埋まってしまっていた。
仕方なし。
上の階の京都っぽい趣きのある飲食店街には硬い長椅子がたくさんあるが、これでは眠れぬ。
さらに上の階へ。

飛び立つ前の飛行機をテラスからみることのできる階である。
テラスへ出るところがちょっとした円形の広場になっており、その円に沿った長い椅子が設置されている。残念ながらふかふかではない。

荷物を降ろし、椅子に横になる。
リュックを枕がわりにする。

うとうとしかけたころ一人の男性がやってきて、僕の足を伸ばした先で横になり寝始めた。僕の足の匂いを嗅がれるポジションだ。それが気になって僕は少し脚を縮こませた。
…いや、あんたもうちょい広いとこ空いてるやん。

眠れなくなってしまったので、移動。
時刻は午前0時半。

チェックインカウンター階へ戻った。
さっきよりも少し人が減っていた。

空いている席を探す。
おおお、隅っこの席でしかも隣がいないというベストポジションを発見。
手すりがあって横にはなれぬが、まあふかふかだからよしとしよう。

30分ほど寝ただろうか。
すぐ後ろの席が騒がしい。

話を聞いていると、同郷人の男女が偶然空港で再開したらしい。
どちらも学生のようだ。
女性の方は春休みで旅行ばかり行っている。今は香港から帰って来たばかりで先週はベトナム、来週はハワイへ行くんだとかなんだとか。
どこにそんな金あんの?と男性。
親がね、ふふふ。と女性。

お嬢様で羨ましい。
箱入りというわけでもなく一人で旅をするという自由も与えてくれている。
いい親御さんだな。

とかいろいろな話を聞いているうちに眠れなくなってしまったので、移動する。
が、移動するにも疲れるので適当なところで腰を下ろし時が過ぎるのを待つ。

チェックインの時間になった。



一人旅は孤独であるか?

台湾への飛行機は女子大生が多かったように思う。
隣の席も女子大生のグループが座っていた。

ふと思い返す。
僕は友達と遠出をしたことがあっただろうかと。

学生時代にはサークルの合宿や研修などで大勢で遠出することはあったが、個人的な遠出はいつも一人だったように思う。

誰かと遠出するのが億劫だったというわけではない。
誘われて計画を立てるはいいが、みんなと都合がつかず結局流れてしまうなんてことが多かった。

僕自身が思いついたらどこか行ってしまう気質でもあるので、計画立てて云々という話に混ざると何らかの影響を及ぼしてしまうのかもしれない。

となりの女子大生たちのひそひそ話が聞こえてくる。
「歯磨きしてぇ」とか「顔洗いてぇ」とかそんな内容だったが、その場の感情を共有できる仲間がいるっていうのは羨ましいなと感じた。

ここで旅と旅行の違いについて考える。

旅は自分のレベル上げ、だと僕は思う。
自分のレベル上げをするものだから、時には過酷、時には退屈でなければだめだ。
自分自身とひたすら向き合う。そんな時間が旅。

反対に旅行は気楽なもので、訪れた先々を存分に楽しむというものだ。
気の赴くまま、足の赴くまま、景色を味わう。そんな時間が旅行。

女子大生複数人に対し、僕は一人である。
一人ってのは寂しいといえば寂しいものであるが、なんだかんだで僕は飛行機や電車の窓の外を呆然と眺めるのが好きだし、どこかの公園で一人ぼーっと過ごすのも好きだ。

自分一人で、訪れる先々を楽しんでいる僕がいることに気が付いた。
なんだか自分自身と向き合う時間自体も楽しんでしまっているようにも思った。

「自分探しの旅」ばかりしていたが、いつの間にか「自分探しの旅行」に変わっていたのだ。

楽しいぞ!
一人旅行!自分探し旅行!

つづく