ベトナム編 深夜特急に乗って

カモ仲間はイスラエル人 昆虫放浪記 ベトナム編 -深夜特急に乗って- その6

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カモになってみよう 昆虫放浪記 ベトナム編 -深夜特急に乗って- その5前回の記事はこちら https://vagabondofbugslife-jpn.com/2019/01/31/vietnam04...

カモ仲間はイスラエル人

さて、待ち合わせの時間になりホテルの前に行ってみると、案内してくれる女性(確かパン二さん。よく聞き取れなかった)と欧米系のカップルがいた。

そう、このカップルは僕と同じカモなのである。

自然な流れで自己紹介タイムになった。
僕以外のみんなは流暢な英語で話をしていた。置いてきぼり感、否めない。

辛うじて聞き取れたことは、
カップルの二人はイスラエル人で、ベトナム旅行にやってきたということだけである。

人生で初めてイスラエル人に出会った瞬間であった。

基本的に英語はペラペラ、カップル二人で話しているときは聞いたこともない言語を使っていた。

偏見に満ち溢れたものであるが、イスラエルといえばパレスチナとの戦争のイメージがかなり強く、正直なところ危険な場所のように思えてしまう。

学生の時に中東問題に関わる講義を受講していたことがあった。
そのときに映像で観たイスラエルには普通の先進国と変わらない街並みがあり、パレスチナとのギャップがこんなにもあるのだなという印象を受けた。

戦争を知らない世代の日本人の僕らが言う「平和」の意味と、このカップル二人の言う「平和」の重さって大分違うと思う。(僕が英語できなすぎて、二人がどんな生活を送ってるのか知ることができなかったのは非常に残念だ)

イスラエルの面積は日本の四国ほどで、イスラエルの端からパレスチナまでは結構狭い。
そう考えると、かなり狭い範囲で空爆やテロが行なわれていることになる。

彼らがパレスチナに対してどんな思いを抱いているのか分かりようが無い。

映画の力を思い出した。気がする。

『パラダイス・ナウ』という映画をご存知だろうか?


パラダイス・ナウ [DVD]

自爆テロを企てるパレスチナの若者を、パレスチナ側からの視点で描いたフィクション映画だ。

これも大学の講義で観た映画であるが、あまり上手で無い日本語吹き替えで観たため、声に気を取られすぎて感情移入できなかった思い出がある。(あとで調べたら井浦新と窪塚洋介の吹き替えであった・・・)

この映画は、パレスチナとイスラエルの映画人たちが協力しあって完成までこぎつけた映画だと言える。

僕は映画の内容云々よりも、映画を制作しようとする姿勢に心を打たれた。
統治者には恐らく絶対できないことを、文化人の力によって成し遂げられるのだ。

園子温が震災後の東北を目の当たりにして詠んだ詩『数』の中にこんな一説がある。

「膨大な数」という大雑把な死とか涙、苦しみを数値に表せないとしたら、何のための「文学」だろう。季節の中に埋もれてゆくものは数えあげることが出来ないと、政治が泣き言を言うのなら、芸術がやれ。

映画を観たところで腹は膨れないし、戦争だって終わらない。放射能だって無くならないし、社会も変わらない。

『パラダイス・ナウ』ができあがり、多くの人がこの映画を観ていたとしても、パレスチナへの空爆は収まらない。

そこにはパレスチナ人とイスラエル人が協力して撮ったという映画があるだけだ。

つづく