ベトナム編 深夜特急に乗って

乗合バスに無理やり….. 昆虫放浪記 ベトナム編 -深夜特急に乗って- その3

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荷物が出てこない

飛行機はハノイのノイバイ国際空港に到着した。

時刻は予定通り19時45分。
これなら時間通りに夜行列車に乗れるはず。

僕はここから計画通りに事を進めた。
飛行機を降りる前のうだうだした時間にスマホの電源を入れ、あらかじめ購入しておいたSIMカードの設定をする。
飛行機を降り速やかに入国手続きを済ませる。

ここまで時刻は20時20分。

が、預け荷物受け取りで足止めを食らう。
荷物受け取りエリアにATMさえ置いてあれば現金を手に入れる時間の短縮になったのだが、それもできぬまま。
grabというアプリでタクシーを呼ぶにもいつ荷物が来るかわからないので呼ぶに呼べない。
荷物で時間をロスするのは予想していたことだったが、30分も待たされることは全くの誤算であった。

荷物は来た。



乗合バスに無理やり

非情にも時刻は20時50分。

急いでATMへ向かい、クレジットカードで300万ドン(日本円でおよそ15,000円)下ろした。桁がすでに訳がわからん。

その勢いのままgrabでタクシーを呼んだ。
空港の出口は駐車場になっており、乗合バスやらタクシーでごった返していた。
こんなところでgrabのタクシーと待ち合わせができるはずがなかろう。

必死こいて探していると、1人のおっさんに声をかけられた。
「grab?」
「イエスイエス!」
僕はアプリを見せてこの車探してるんだよ、と片言の英語で伝えようとした。
するとおっさんは、この車に乗れと言って乗合バスの方へ誘導する。

いやいやおいらはgrabのタクシーを探してるんじゃと答えると
いいからいいから、という仕草をして僕を乗合バスへ乗せた。

こいつは僕をgrabのタクシーまで案内してくれるのか?とか思ったが、いやこれはどうやらただの乗合バスだろうと思い、車を降りて荷物を取り出そうとしたのだが、無理やり乗せられてしまった。
こりゃちょっとやばいなと思っていた矢先、grabのアプリ上でタクシーの運転手からメッセージが飛んできた。
「あんた見つけられないからキャンセルな」

時刻は21時10分になろうとしていた。

仕方なく乗合バスが出発するのを待つ。
おっさんが何か言っている。
「220,000」
「?」

突然「とぅーはんどれっどとうぇんてぃさうざんど」
と言われても三桁区切りのお金単位に慣れていないため計算ができない。というかベトナムドンの単位が大きすぎる。

仕方ないので300,000ドン差し出す。
細かいのは無いのか?と聞かれたので、財布を確かめてみると20,000ドンぴったりが無かった。

おっさんは仕方がないという顔をしてそのまま300,000ドンをポッケに入れた。

おお、これがぼったくりというやつか。
僕は腹立たしく思うと同時に妙に感心してしまったのである。

僕の他に数人の客が乗り込み、
運転手らしきおっさんが乗ってきた。



時刻は21時15分

乗合バスは出発した。

行き先は?と聞かれ、Googleマップで夜行列車の出発駅(ハノイB駅)を英語で説明するのだが、ホテル?どこ?みたいに言われるので、これから電車乗るんやと説明するも上手く伝わらない。

これは困ったなと思った矢先、
「日本人の方ですか?」
といきなり日本語が僕の席の後ろから聞こえてきた。
振り返ると、僕と同じぐらいの年齢の日本語が話せるベトナム人の兄ちゃんだった。

「どこへ行きたいんですか?」
「これからハノイB駅まで行って夜行列車乗るんです」
「ん?ハノイB駅?」

僕はスマホを兄ちゃんに見せると、運転手のおっちゃんにベトナム語で事情を説明してくれた。

おっちゃんは猛スピードで駅まで僕を送り届けてくれた。

ベトナム兄ちゃんにお礼を告げ、僕は急いだ。

時刻は21時55分。
列車に間に合った。

今思うと僕はかなりツいていたと思う。
もしその兄ちゃんがバスに乗っていなければ、行き先が伝わらず、夜のハノイ市内をさまよう羽目になったに違いない。

それはそれで良い経験になるはずだが、僕の本来の目的は昆虫を探しに行くことなのである。

本当に運が良かった。

つづく